筑前琵琶 筑前琵琶
生の「琵琶」による語りからは、セリフとその情景、そして、登場人物の動きや、場の雰囲気などが、手にとるように伝わってくるのです。正に「解る!!」という感じです。
美しい筑前琵琶です。  
琵琶と聞いて、何を連想しますか

 「琵琶」と聞いてまっさきに思い浮かぶのは、「耳なし芳一」に代表される、琵琶法師と「平家物語」の語り口ではないでしょうか。
 そして、「難解」という言葉がついてまわることが多いと思います。
 そんな、思いを一気に払拭させてくれる、「ほんまもん」の「琵琶」に出会いました。
2004.7.6発信
南大阪ほんまもん研究会
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舞台裏
筑前琵琶 大師範 竹本旭将先生

 今回、「ほんまもん」の「琵琶」の何たるかを教えてくださったのは、筑前琵琶の大師範 竹本旭将先生です。竹本先生は、17歳の時に、師匠にその天賦の才を認められ、修行に励まれました。それから、約40年、琵琶の道を極められたという素晴らしい先生です。

 先生に、インタビューをさせていただきながら、試演もしていただきました。学生時代、伝統芸能研究会に所属していたこともあり、能や狂言、浄瑠璃などは、ライブで何度も見てきました。しかし、生の「琵琶」による語りは初めてです。『平家物語』の語りを、テープなどでは聞いたことはありますが、それをもはるかに超えるほど、素晴らしいものでした。

 『平家物語』中の「那須与一 巻」を拝見させていただいたのですが、セリフとその情景、そして、登場人物の動きや、場の雰囲気などが、手にとるように伝わってくるのです。正に「解る!!」という感じです。例えば、那須与一が弓矢を射る場面で、「ひょうふつ」という擬音語が出てくるのです。本文解釈中でも、非常に難しいところで、その場の緊迫感などを理解することが、本を読むだけではなかなか難しいところです。この場面も、琵琶の音と先生のかもしだす何とも表現しがたい雰囲気をもちながら行なわれる「語り」にかかれば、「なるほど!」とわかってしまうのです。
何かと話題の新撰組「池田屋事件」
何かと話題の新撰組「池田屋事件」を語る
本当に表現力豊かな演奏です。
 何よりも、演奏中の竹本先生の充実した表情が素晴らしく、体全体からかもしだされる雰囲気に独特の空間をうみだされ、聞いているうちに、とても心地よい気持ちでいっぱいになるのです。

 直接、このことを体験し、ぜひともこの「琵琶」の音曲と「語り」を世の中に広めていきたいと強く思い至りました。
さわやかな笑顔でのお講義
さわやかな笑顔でのお講義
 琵琶を職人の方が作ろうとすると、まず、それだけ大きな木を見つけくりぬくことから始まるのです。一人の職人の方が手作りでできるのは、よくて年間で5〜6本作れればよいとのこと。なんともものすごい手間隙かけた大きな作業となるのです。
 もちろん、現在、市場に出回っている琵琶の数も相当数あり、それを修復したりしながら、師匠から弟子へと譲り伝えられていくという形で、奏者の手に届いているものも相当数あるとのことです。
 
琵琶の歴史と形態、製作

 琵琶の歴史は古く、百科事典をひもといてみると、琵琶はもともと、奈良朝の頃、シルクロードを通って中国から楽器そのものは伝わってきました。このときの琵琶は正倉院に宝物として残っているとの事です。
 琵琶の種類は、雅楽に用いる楽琵琶と『平家物語』を語る平家琵琶、鹿児島で武士のたしなみとして流行した薩摩琵琶、そして、明治20年代に新たに北九州に《筑前琵琶》が起こったのです。

 筑前琵琶については、形は小さく、弦は四本と五本の二種があり、音程を変化させる柱は五つあります。ただし、音程については、柱と柱の間を指で押さえることにより変化させます。その結果、微妙に音程が変化していき、音の「ゆらぎ」が、聞いているものの心地よさを倍増させるのです。

 ファジーという言葉がありますが、まさに、微妙な「ゆらぎ」「あいまいさ」が、日本人の心をゆさぶるのです。

 実際に、貴重な筑前琵琶を手にとらせていただきました。そのずっしりとした重量感にも感動しました。この重量感があるからこその音色なのかと、一人感じいってしまいました。また、そのお値段も聞いてびっくり、下世話な話で申し訳ないですが、それだけしてもあまりある価値があると思わずにはいられませんでした。
筑前琵琶の流行

 筑前琵琶は、大正から昭和の始めにかけて大流行をしました。昭和五年のNHKの国民嗜好の調査では堂々の一位となっています。
 戦記ものの「語り」を筑前琵琶を用いて行なうなど大きなブームとなったのです。もちろん、当時の国民がその題材について知識があったことが大きな要因となり、聴衆が「知っている」語りを行なっていくことでどんどんと人気がたかまっていったのです。
 当時の題材では、日露戦争をテーマにした「二百三高地」といったものもあり、その精神性と思想性について、GHQが認めない姿勢を打ち出し、その大流行も終わりをつげたのです。
 戦後GHQによる占領政策も終わり、新たな時代に入ってくるにつれて、徐々にその人気も回復してきましたが、一世を風靡したときの勢いには戻らず、現在にいたっています。

 
手書きの唄い本が主流です
手書きの唄い本が主流です
語りの演目

 一般には、琵琶の「語り」といえば、「平家物語」がまっさきに思いうかびますが、それだけではもちろんなく例えば、能や浄瑠璃、歌舞伎の題材にも使われている「舟弁慶」や、上述したような「二百三高地」、「新撰組」の「池田屋騒動」、果ては「お蝶夫人」といったものまであります。

 また、「南大阪ほんまもん研究会」の基盤である、河内長野ゆかりの「楠公もの」もあり、非常に多彩な演目となっています。
 
後継者の育成

 日本の伝統芸能のあらゆる分野で、「後継者の育成」という大きな問題に直面していますが、筑前琵琶についても例にもれず、大きな問題となっているのです。竹本旭将先生は、「現在の若者は、耳がいいから、筑前琵琶の「音」もしっかり耳でとることができるはず」と語られています。琵琶の稽古も基本的には師匠とのマンツーマンです。そのため「音に敏感」であるということが大きな下地となるのです。現在の若い人たちは、色んな音楽をシャワーのようにあびていることもあり、下地としては十分あるとのことです。

 一人でも多くの若者たちに伝えていきたいという竹本旭将先生の熱い思いがひしひしと伝わってきました。
イベントのご案内
「琵琶」の素晴らしさに実際に触れていただける機会を、積極的につくられています。
 今回は、7月21日(水)に大阪の国立文楽劇場にて催される、「第15回 琵琶五人の会」についてご案内いたします。この催しは、竹本旭将先生始め総勢五名の先生方が、「琵琶」の素晴らしさを広めるために、「無料」で行なっているイベントなのです。
 ぜひとも、多数の方にご覧いただきまして、「琵琶」の素晴らしさを実感していただき、「後継者育成」への道となってほしいと痛感しております。以下に、詳細をご案内いたしますので、ぜひとも、多数の方々がご参加くださいますようお願い致します。
「第15回 琵琶五人の会」
日 時:平成16年7月21日(水) 開場:午後6時 開演:午後6時30分
場 所:国立文楽劇場小ホール(大阪市営地下鉄・近鉄日本橋駅下車 7号出口より徒歩1分)
入場料:無料
主 催:琵琶五人の会
※メンバー:加藤司水・杭東詠水・奥村旭翠・中野淀水・竹本旭将(パンフレット記載通り)
演 目
1:筑前琵琶 日本橘会 奥村旭翠  「廣徳寺」
2:薩摩琵琶 錦心流全国一水会 中野淀水  「舟弁慶」
3:筑前琵琶 日本旭会 竹本旭将  「羅生門」
4:薩摩琵琶 錦心流全国一水会 杭東詠水  「白虎隊」
5:薩摩琵琶 錦心流全国一水会 加藤司水  「敦盛」
お問合せ先:竹本旭将 TEL.0721−63−2181
 
【取材を終えて】
 今回、初めて、「ほんまもん」の「琵琶」を聞かせていただきました。「語り」も聞いて、感動で心が打ち震えています。そして、この「琵琶」は誰もが楽しめるエンターテイメント性を十分持っていると確信しました。ただ、多くの人が実際に触れる機会が多くはないということがあります。
 もともと、「琵琶」は多くても30人程度の方々までで聞かせるものであるとのことですが、それならばできるだけたくさんのイベントをつくっていきたいと痛切に思いました。
 日本が世界に誇れる、伝統芸能。河内長野から、発信していきましょう!(ご夫婦の溌剌とした笑顔も印象的な取材でした。)─藤澤哲也・弘美─
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